140年前の江戸城を撮った男
江戸東京博物館へ行ったいちばんの目的は、企画展「140年前の江戸城を撮った男-横山松三郎展」。
タイトルの通り、明治時代の江戸城の本当の姿が見られるということで行ったのですが、
横山松三郎という写真家の作品を通して時代をひも解く本展、なかなか興味深いものがありました。
横山松三郎は幕末から明治にかけて活躍した写真家。
時代の転換期にあって、西洋から伝来した当時最先端の技術を独自に研究・習得し表現しました。
択捉で生まれ、写真技術を習得、上野池之端に写真館「通天楼」を開きます。
そして江戸城はじめ古器旧物などの歴史に残る写真を撮影しますが、
さらに写真と油絵を融合させた「写真油絵」を考案するなど、さまざまな表現に挑戦。
まさにマルチメディアの先駆者でした。
江戸城は明治政府に渡り皇城となりますが、
手入れをするほどの経済的余裕が政府にあるわけはなく、次第に荒廃していきます。
「素晴らしい文化財をなんとか残したい」「せめて姿だけでも後世に残せないか」と立ち上がったのが
太政官少史・蜷川式胤(にながわのりたね)という方。
蜷川式胤のはたらきかけにより、横山松三郎が明治政府の命を受け、江戸城を撮影しました。
この蜷川式胤は、日本の陶器を海外に紹介もしている古美術研究家だそうで…
江戸城のすばらしい姿を残してくれて、本当にありがとうございます!
重要文化財にも指定されている江戸城の写真は、ガラス原板(ネガ)。
LED照明を当てられたものと、ネガに彩色されたものが同時に展示されていました。
江戸東京博物館でも初公開だそうです。
生い茂る草、崩れかかる石垣が、江戸城の荒廃っぷりを現していて、
徳川幕府の栄華もどこへやら、時代が転換した当時の社会状況もうかがえます。
巽三十櫓、数寄屋橋門、和田倉門、鍛冶橋門、書院二重櫓、東三重櫓、重箱櫓…
今はなき江戸城の姿を鮮明に見ることができて、感動。じーん!
ネガに油絵が施された「旧江戸城之図」というおもしろい作品もありました。
この作品、これまでは横山松三郎の作品とされていましたが、
明治の洋画家、高橋由一の作品ということがわかったのだとか。
江戸城の姿(巽櫓かな?)の力強く表現されていていました。
横山松三郎のセルフポートレートもあるのですが、
なんというか写真に古くさい感じがしなくて、空気にふわっと温度がある感じ。
「あれ?140年前の人?」とふわっとタイムスリップしたような感覚になります。そして、イケメンでした。
彼が使用していた機材も展示されているのですが、意外とシンプル。
写真技術の専門的なことはわかりませんが、ベースの部分はあまり変わらないのかもしれません。
素朴な感想ですが…思いや空気を具現化できる、写真っていいものですね。
城メグリスト