城メグリスト

萩原さちこのプロフィール

城郭ライター、編集者。小学2年生で城に魅せられる。執筆業を中心に、メディア・イベント出演、講演などもしています。

●詳しいプロフィールはこちら

城メグリストのサイト

城メグリスト

●お仕事実績はこちら

アーカイブ


森と湖の国 フィンランド・デザイン展

サントリー美術館で開催中の
森と湖の国 フィンランド・デザイン展へ行ってきました。
18世紀後半から現代までのガラス作品を中心に紹介する展覧会です。

かつてフィンランドを旅行したとき、
ARABIAのファクトリーショップでバイヤー並みに大量買いし、店員さんにやや驚かれた私。
とくにフィンランドやスウェーデンの陶磁器が好きでして。
ittala、aarikka、marimekko、stockmann、など
北欧デザインに囲まれた生活になりつつあります。。

さて、それはさておき。

フィンランドの生活用品は
“timeless design product(時代を超えた製品)”がコンセプト。
実用性と美しさを兼ね備え、暮らしに洗練されたデザイン性をもたらす「生活の中の美」
などとはよくいわれるところです。
生活になじみやすいテキスタイルやフォルムがなんとなく好き、で十分なのですが、
この展示会でデザイン哲学みたいなものに出会い、魅力の奥行きがより深まりました。

まったく無知だったフィンランドの歴史にも遭遇。
もともとはスウェーデンの支配下にあり、
スウェーデンの森林資源確保のためにフィンランドでのガラス製造がはじまったこと。
そのため初期の作品はオリジナリティがないのだけれど、
紆余曲折あり、やがて独立し第二次世界大戦後の復興にあたり
「デザイン」を「文化」として育成する、という政策によって企業デザイナーが台頭し、
さらに、70年代のオイルショックによる生産ラインの縮小で
デザイナーによるガラス工芸の製作が盛んになってゆく。

そうした社会的背景の中で
「デザイン」「生活」「社会」をどう捉えて創造していくか、
というところに目が向けられていったのですね。
フィンランド国民の考え方や思想がこの文化には詰まっていて、
この独特な世界感の共通点や根源はそこなのだなあ、と改めて感じました。

ふだんは物欲だけでフィンランド含む北欧デザインを見ている気がしますが(笑)
黎明期、黄金期を経て現代へ、
日用品からアートの分野に転換していく一連の傾向みたいなものが見えて
こういう見方もよいものだなあと思いました(というか好き)。

「フィンランドのガラス製品というのは、とにかく影が美しいなあ」
というのが、いちばんの感想。
ときに製品より影がきれい。美術館のライティングならではですね。
デザインのことはわかりませんけれど、
これって例えばイタリアのガラス製品にはないもので
私が惹かれる大きな理由のひとつな気がします。