城メグリスト

萩原さちこのプロフィール

城郭ライター、編集者。小学2年生で城に魅せられる。執筆業を中心に、メディア・イベント出演、講演などもしています。

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対馬の西山寺

 

昨日から対馬です。
1ヶ月ぶり。毎月来られてうれしい!


こちら私の定宿、国書偽造気分を味わえる西山寺です。
朝鮮通信使の外交機関「以酊庵」が置かれていたのが西山寺なんです(江戸中期以降)。

江戸時代初期、国交回復の橋渡しを務めた対馬の宗義智は、やむなく交渉成立のため国書を偽造。
それが江戸幕府にバレないよう、偽国書に合わせて朝鮮からの返書も改ざんしちゃいます。
ちょろまかすべく不正の連鎖は続き、義智の死後も組織ぐるみの反逆罪を重ねていくのです。
この国書偽造がやがて家老の柳川調興に暴露され、
徳川家光が直々に江戸城大広間で裁定を下す…という大事件に発展するわけなのですが。

この頃の宗氏の生き様、私は好きです。

最前線たる国境の地で板挟みになりながら、
結果的に防衛協定を締結させ朝鮮貿易の独占に成功したバランス感覚よ!
均衡の保ち方、判断力や行動力が、政治家というより商人っぽい。笑
宗氏って関ヶ原の戦いで西軍につきながら改易すらされておらず。
つまりは、この地を治められるのは宗氏しかいないってことなんですよね。
家光が証人喚問した柳川事件も、
確立しつつある江戸幕府の基盤や理念を垣間見る出来事な気がして興味深いです。


先ほど博物館で青銅器の企画展(明後日まで)見てきたんですが、
交易においても古代からずっと中継地なんだなあと実感する展示でした。
対馬って軍事的緊張が高まると最前線になってしまう地で、だからこそ古代から近代まで遺跡の宝庫。
自然も文化も技術も独自性があって。
江戸時代の城下町も、中世的な構造と近世的な構造が共存していたりと本当におもしろいです。


…そんな話は一切しませんが、明日は清水山城の現地見学会です。
対馬市教育委員会文化財課の方も一緒に清水山城を解説します。楽しみ!
国境の島たる最前線の緊張感、秀吉の狂気と脅威、突貫築造ならではの石垣、
グロッキー状態でたどり着いたであろう日本軍のみなさんが見上げた見事な石塁、
そして絶景を堪能しましょうー。
実は今日も登ったけどな!笑


ちなみに西山寺の宿泊者は早朝に坐禅体験できるんですが、もちろん一度も参加したことはない。
だって、対馬は不夜城も楽しすぎるんだもん!笑
明朝も起きないことをここに誓います。

対馬っていろんな意味で離島っぽくなくて、飲み屋が多く、なぜかやたらスナックも多い。
対馬海流の恵みに感謝しつつ(呼子のイカ、あの子たちも対馬出身なのよ!)、
対馬お城大使として不夜城をしっかり堪能したいと思います。⁡

 

あ、西山寺。
宿坊といってもWiFi完備の快適な洋室です。