城メグリスト

萩原さちこのプロフィール

城郭ライター、編集者。小学2年生で城に魅せられる。執筆業を中心に、メディア・イベント出演、講演などもしています。

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弘前2015冬③〜シードル工房見学など〜

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家が埋まるかと思うくらい、降って積もってふぶきました、弘前2日目。
とても印象的な1日になりました。

生命力を感じる産業や工芸というのは、
携わる人がそれを命あるものとして扱い共存しているのだと改めて感じました。
そういうしなかやかな息づかいのようなものや
条件や理屈では価値を決められないものにやわらかい光を当て、
その世界を表現できる物書きになろう、
さらに城というフィルターを通して誰にも書けないものを書こう、と改めて思ったのでありました。

シードル試飲、工場見学、りんごと地元食材のフレンチ…など今日はりんごづくし。
農家、市が、各業者や団体が、どうブランド力を高め品質を維持に取り組んでいるか、
観光資源としてどう生かしていくかというところまで。
弘前人の価値観や地に足のついた発想、戦略・企画の軸みたいなものの温度、私はものすごく好きだな。

 

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お世話になった弘前パークホテルさん。ホテルの方が吹雪の中お見送りに出てくださいました。
午前中は、弘前市りんご公園へ。

 

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kimoriさんという、農家さんがやっている小さなシードル工房へやってきました。
kimoriとは「木守り」の意味で、収穫後のりんごの木にひとつだけ残った実のこと。
収穫への感謝と豊作への願いを込めて畑の神様に捧げる実を指すそうです。
kimoriというネーミングには、季節と実りをわかち合い紡いでいく、という願いが込められているようです。

 

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kimoriさん、サイトもとってもかわいいです→
弘前りんごが育つ背景からシードルができるまでの行程もイラスト付きで載っていますよ。

 

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クッキングオーブン付きの薪ストーブ、薪はりんごの薪だそう。

 

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焼きりんごづくりをさせてもらいました。

食器はポーリッシュポタリー。かなりかわいい。
ポーランドも焼きりんごを食べるそうです。
関係ないけど、ポーリッシュポタリー人気ですね。
うちは北欧食器で溢れているけど、それとはまた違ったフォルムと色使いで欲しくなる。

 

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シードル、とてもおいしいです。
アップルタイザーをイメージしていたけれど全然違いました。
(私の淡い記憶ではニッカシードルもそれに近かったような…)
まず、炭酸を加えていない自然発砲なのでとてもやさしい。
二次発酵させることで自然に炭酸が発生し、りんご果汁に溶け込むのだそうです。

微発砲のスパークリングワインともまた違う、ほかにはない確立したお酒。
唯一無二のものを前にしたときの、ほんのりとしたしあわせ。
もっと世に知られてもいいのにー、と思いました。
大量生産できないところがいいんですけどね。

私は甘いお酒より辛口派なので、ドライな秋限定ラベルが好みでした。
(とはいえ、スイートラベルもフルーティな白ワインに比べればかなりさっぱりです)
リンゴジュースのようにごくごく飲めてしまいますが、
アルコール度数は5〜6度とビール並みなのでお酒が弱い方は注意。

アルコール度数を製品によって変えることにはじまり、
収穫したりんごによって味も製法も変わるとのこと。
まるで生きもののようだー。
シードルは加工品ではないのだな。産業を越えた文化のようなものを感じました。
「シードルは農産物」の言葉がとても印象的でした。

 

りんご農家は後継者がいなくて危機的状況にあるそうです。
そのほか、異常気象の影響でりんごをとりまく環境も変わってきていたりと問題は多々あるようです。

弘前りんごは、明治の版籍奉還後、りんごとぶどうの栽培が奨励されたことにはじまります。
ぶどうは絶滅したものの、風土や気候に合うりんごはよく育ち、
さまざまな試行錯誤を繰り返しながら、
害虫病による被害、戦争や災害と戦ってここまでの成長を遂げてきたのだとか。
りんご畑につくられたこの場所は、地域の人に向けた集いの場でもあり発信の場でもあるのですね。
こんなふうに、できることをひとつひとつやっていくことで続いてきたものなのだなあ。
世界は違えど、私がすることやできることを考えさせられた時間でもありました。

 

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テーブルとチェア、工房入口の白いウッドスタンドは、
りんごを入っていた箱を弘前の建築デザイナーさんがリメイクしたものだそうです。
テーブルに残る数字は、競りの際に書かれたもの。素敵な空間。

シードルが入っている津軽焼きの器も、たしかりんごの木炭が入っていたはず…。
ワイングラスのほうがフォトジェニックかもしれないけれど、断然、津軽焼きのほうがよい。
シードルの味わいのためにも、津軽焼きの器で提供しているそうです。

 

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焼き上がり。

りんごの剪定のお話が興味深かったです。
こんなに豪雪なのだから完全にオフシーズンかと思いきや、
この時期にどう手入れするかでりんごの良し悪しは決まるのだ、と。
枝は血のめぐる人間の四肢と同じ。
成長まっただ中の枝の剪定をほんの少しでも誤ると、将来の姿を変えてしまう。
そしてその見誤りは、わずか半年後には謙虚にあらわれるのだそうだ。
見極めて見越して、伸ばして導いてあげることが大切。
当たり前だけれど、りんごも生きものなんだなあとしみじみ思いました。

 

シードル誕生秘話も興味深かったけれど、弘前におけるりんご産業の歴史が私はおもしろかった。
りんごの木を手入れするハサミは、
りんご植林を推奨した人(痛恨の失念…初代県知事か?)の命により
弘前城下の鞘職人(か鍛冶職人)がつくり出し、改良に改良を重ねたという歴史があるそうです。
つまり裏を返せば、弘前のりんご産業は城下町だからこそ発展したということ。
栽培の立役者である菊池楯衛も有能な津軽藩士ですし、
栽培が盛んになったのも、職を失った旧士族達が困窮にあえぐのを防ぐのが目的といわれます。
やっぱりね、城を通して地域を見るのはおもしろいと思うのです。
歴史は現在進行形。改めて取材したいな。

 

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旧小山内家住宅、という移築された藩政時代後半の農家住宅を発見。
雪に埋もれて見学不能でした。
夏にはおばあちゃんが語りべをするイベントも催しているそうです。気になる。

関係ないですが、子供の頃に読んだ推理小説に
どうしても見つからなかった殺人の凶器がつららだった、というのがあり
「そうかー、解ければ証拠隠滅できちゃうスグレモノの凶器だな」と感心したのと同時に
「首に刺されば死ぬほどの殺傷能力がある」という恐怖感が刷り込まれてしまいました。
以来、うかつに下を通れません。
実際、頭に刺さることはあるんでしょうか?死にはしないとは思うけれども、痛いんでしょか。
刺され経験者がいたら教えてください。

 

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クイズも、埋もれて答えどころか設問すらわからん。

 

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ひとくちにシードルといってもいろいろ銘柄がありびっくり。全種類制覇を熱望。
おみやげに2本購入。りんごジュースもおすすめのものを2種。
アップルブランデーが気になりましたが、もう持てないので断念。
弘前にしか売っていないそうで、わざわざ東京から買いにくる人もいるそうですよ。

次回は買おうっと。
そして、次回は酒造見学に行きたいです。

 

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それにしても、これかわいいわね。

 

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りんごポストもね。
駅前と区役所のポストはもっとりんごが大きかった気が…。
りんごの大きさは権力の指標だそうです(嘘)。

(続く)