城メグリスト

萩原さちこのプロフィール

城郭ライター、編集者。小学2年生で城に魅せられる。執筆業を中心に、メディア・イベント出演、講演などもしています。

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イキウメ「ミッション」

大好きな劇団イキウメ【ミッション】をシアタートラムを観てきました。

今作はかなりよかったぞ。
私も日々、使命について少なからず考えるのだけど
形のないものって空しくて、度をすぎたり方向を見失いやすいんですよね。
でもそういうところが人間らしいところなのだけど。

違う表現や世界に目を向けて自分なりに考えることは大事だなあ、と。
 

天下統一!城攻めナイト

「全国城攻め手帖(メディアファクトリー)」発売記念イベント
天下統一!城攻めナイトに行ってきました。

ゲストはいまあ城好き著名人の筆頭、春風亭昇太師匠。
スライドを使ったトークショー、かなりわかりやすくて会場が一体化してました。

昇太師匠は本当にいつも楽しそうにお城の話をなさいますね。
当たり前すぎて失礼ですが、トークのテンポがすばらしくて時間を忘れるほど話が楽しい。
山城なんて知らない人でも、なにやらワクワクしてしまうのも納得です。
私も少しは表現力をつけたいものです。

ちなみに昇太師匠、「城好きの人」というムード歌謡でCDデビューするそうです(笑)

大人計画「ウェルカム ニッポン」

愛して止まない大人計画の久々の本公演へ行ってきました。

うーん、わからなかったー!(笑)
エネルギッシュではあったけれど、
私の今日の心理状態では奔放すぎてついて行けなかった。。
確実なのは(毎回共通の総論)、
舞台上の阿部サダさんはやっぱりまぶしすぎるということと、
俳優をしているときのクドカンはかっこいい、ということです。

私はまだ、この震災の触れ方にはちょっと抵抗があったかな。
いや、けっして軽率な扱いというわけではないですが。
しかし、それこそが松尾節というか、
しょうもないことでゲラゲラ笑い転がせられた直後に
ちょっと嫌な気持ちにさせられたりするのが、ある意味いかにも、なんだな。
人間の歪みや暗い部分に直面するのは、ものすごく重い。けどおもしろい。
 

江戸時代の脳トレ

最近ちょいと江戸の歴史や文化を勉強しているのですが、
先生が頭の小休止として出題してくれる<判じ絵>がおもしろい。

判じ絵とは、半単語の音を絵に置き換えて表現するもの。
たとえば、トップphでいうと、
8番→「2本(にほん)」の「橋(はし)」に濁点がついて「日本橋」、
9番→「8(はち)」匹の「蝶(ちょう)」+「“のぼり”の上が切れているので“ぼり”」で
「八丁堀」、という具合です。

なぞなぞ好きな江戸っ子の茶目っ気たっぷりの知的娯楽。
笑えるものから、あまりのくだらなさにイラッとするものまでいろいろだけれど、
江戸時代の人は頭がやわらかかったんだあ、と感心。
必要なのはカンとユーモア、かな。
最初はまったくわかりませんでしたが、慣れてくるとひらめいてくるからフシギです。
 

代官山の手ぬぐい屋さん「かまわぬ」も判じ絵。
「鎌(かま)」+「輪(わ)」+「ぬ」。「へのぬ」じゃないですよ。

江戸っ子は教養が高かったこともわかりますね。
読み書きができなければ、こんな高度な言葉遊びはできませんもん。

江戸しぐさと落語の会

<江戸しぐさ>とは、江戸商人が生み出し町衆へ広まっていった、
トラブルを避け、気持ちよく暮らすためのセンス。
日常の立ち居振る舞いから言葉使いまで、人との付き合い全般にわたる知恵のことです。

雨の日、狭い下町の路地でがすれ違うときには、
相手が濡れないよう、お互いに傘をさりげなく斜めにする<傘かしげ>、
船に誰かが乗ってきたときは、全員が少しずつ詰めて席をつくる<こぶし腰浮かせ>、
足を踏んでしまったら、踏んだほうが謝るのはもちろん、
踏まれたほうも「こちらこそ、うっかりしてまして」というそぶりで返す<うかつあやまり>。

「へえ、こういう心配りができたら上品でいいなあ」くらいに思っていたのですが、
商人のリーダーが築いた行動哲学であるというルーツを聞いて納得。
上に立つ人のマナーやエチケット、自意識や心構えが網羅されたものであるのだと。
そこには徳川家康がつくりあげた国家構造も関係していて、ふむふむと聞き入ってしまいました。

江戸しぐさでいう“しぐさ”とは、「仕草」ではなく「思草」と書くそう。
つまり、思いやりが行動となったものです。
人にして気持ちいい、してもらって気持ちいい。共生の精神ですね。
そして、マナーではなく“くせ”だというところがポイント。
譲り合いの心を大切にし、自分は一歩引いて相手を立てる。
いばらず、こびず。相手を尊重し対等な人間同士として接することを
ごくごく自然に実戦していた、ということなんですね。
こうすればいい、こう言うべき、というマニュアルを実戦するのではなく
とっさに判断して無意識に行動する。これはけっこう難しい。

ちなみに江戸っ子の気質というのは
○目の前の人を仏の化身と思う
○時間どろぼうをしない
○初対面で肩書き、年齢を聞かない(人を見る目を養う)
○遊び心を忘れない(なぞなぞ大好き)
○世辞が言える
○口約束を守る(公約違反はもっともNG)
○見て分かることは言わない、読んでわかることは聞かない
○人の領域に入らない(餅は餅屋)
○知識ではなく感性で決める(情報に左右されない)
…などなどだそうです。

ものすごく共感できるのは、私が東京出身だからでしょうか?
(代々の江戸っ子ではありませんが)
上方との違いが出ているような。。

江戸っ子というと威勢がよくてちょっとガサツなイメージもありますが、
言葉使いがていねいで、“世辞”を言えるのが、本来の江戸っ子。
この“世辞”というのは、機嫌を取るためのおべんちゃらではなく、
「こんにちは(今日は)」の後に続く「いいお天気ですね」のような
会話が弾むきっかけになるような、気の効いたひとことのことだそうです。

なぜこの日記タイトルかというと、
<落語には江戸しぐさをテーマにしたものが多い>ということで
三遊亭竜楽師匠の『天災』を聞く会でもあったから。
しかし長くなるのでこの話は割愛します。
お後がよろしいようで〜(←これも江戸しぐさ)。

小池アミイゴさん個展「東日本」


※DMより引用

小池アミイゴさんの個展「東日本」へ行ってきました。
前職で何度かイラストのお仕事をお願いしたアミイゴさん。
イラストも素晴らしいけれど、この世界もかなり好きだなあ。
「違う表現をしていかないと凝り固まってしまうから」と。
アートな作品というのは、使う脳が違うのでしょうか。

アミイゴさんの使う色、とくにピンクの色と使い方がとても好きです。
色や線にも生命があるんだなあ、とかぼんやり考えながら見ていました。
絵筆のひと刷毛に強さや弱さ、エネルギーやシンパシーが宿っている感じ。
「印刷で出にくい色」と真っ先に考えてしまうのは職業病ですが、
印刷物やディスプレイで再現できない色というのは、
すなわち人間に近い体温のある色、ということなのではないでしょうか。

これは書いていいのかわかりませんが…
「城の絵、描いてみたい」と言ってくださりうれしかったなー。
「きれいというより怖い」というなにげない一言、かなり核心をついてます。
そう、城とは本来美しいものではないのです。
その視点は感動的なものがあって、
「ああ、やっぱりこの方はアーティストなんだなあ」と思いました。

アミイゴさんが書く城の世界かあ!それはそれはステキだ。がんばろ。

SPECE YUIさんのHPから、作品の一部を見ることができます →
やっぱり印象が違うので、実物を見てほしいところですが…

うづめ飯

津和野で、郷土料理の<うずめ飯>なるものを食しました。

お出汁をかけたごはんの下に、煮含めた椎茸や人参、刻まれた蒲鉾や高野豆腐が隠され、
刻んだせりとすりおろした根わさびが添えられています。

質素倹約の時代に具を隠して食べた庶民食であるとか、
骨をうずめるという意味で出された婚礼料理であるとか、
根わさびを味わう特別料理であるとか、など諸説あるようです。

しみじみした料理だけど、なにげにおいしい。
特産わさびがピリッと引き立って、
日本酒を試飲しまくった後にはかなりよい感じでございました(笑)
 

鳥取城フォーラム2012 太閤ヶ平見学会

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鳥取城フォーラム2012
『中井均先生と歩く 鳥取城&太閤ヶ平』
講師:中井均先生(滋賀県立大学人間文化学部准教授)
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前日の講演会に次いで、中井先生による現地見学会。
天気予報:暴風雪で中止が危ぶまれましたが、無事催行。中井先生、さすが晴れ男です。
ちなみに“暴風雪”という気象用語があることを、初めて知りました。

 

登る前に、資料を見た段階で、70カ所にも及ぶ膨大な数の陣城が存在し、
そして状態よく残っていることに驚愕。
発掘と研究をされている西尾先生が
ポイントや特長、位置関係などをご丁寧に教えてくださり、もうゾクゾク。
「2、3日あればひと通り行けますよ」とのこと。うーん、まわってみたい!
全部はムリでも、とにかく最大の見どころである
複数の空堀でつながれた総延長700mの大防衛ラインは必ず見に来ねばなりませぬ!
どうやって鳥取城が孤立していったのかを知り、
織田vs毛利の全面直接対決の背景を城から知りたい。

中井先生のお話に夢中だったこともあり、あまり写真を撮っていません。
が、段々状に残る小さな曲輪は肉眼で確認できるし、次第に規模を増す土塁も見事。
懸造の建物があったであろう場所(陣城に!)、横矢掛がりの虎口、絡手口の切岸。
縄張図をもとに歩いていくと、感動的です。
「こんなに大規模な遺構が残っているとは思っていませんでした!
ここはもう“城”ですね!」と、先生にコーフン気味に感想をお伝えしてしまいました。

単なる一城を攻略するには大規模すぎる太閤ヶ平は、
やはり織田vs毛利の決戦のための陣城だったといえるだろう、とのこと。
ガッチリと設置した大防衛ラインのそのまた上に、異常なまでの土塁群を重ねて防衛設備を構築。
本陣の一時的な陣城とは思えない構造から推察しても、
信長本人が出陣するための地だったことが考えられるそうです。

トップの写真の背後に見える山が、吉川経家の本陣久松山。
当時は木のないむき出しの状態のはずなので、兵糧が尽きていく経家側の様子は、少し見下ろす形で一目瞭然。
500mほどしか離れておらず、逆に秀吉側が煮炊きする様子は丸見え、音も丸聞こえだったと考えられます。
こうした視覚的な攻撃が、心理的にも追いつめていったはずです。

帰りは、市民の方も少なかったので、先生とお話しながら下山しました。
昨日の日記でちらりと書きましたが、そこでお話したのが、
講演会で先生の言葉の中で印象的だった、「戦国時代は“戦争の時代”であった」ということ。
そうなんですよね。戦、武将とドラマチックでカッコいい時代のイメージにされてますが、
実は日本史においては、日々血で血を洗う暗黒の時代。
そういう意味で、城とは負の遺産。

たとえば、信長が楽市楽座を推奨したのは、
城下町を活性化させて、貨幣を流通させて、庶民の生活が活発化した、
なんて見方をしがちですが、根本は違うところにあるのですよね。
信長は行ったのは、富を制すること。要は、軍資金を稼ぐことが目的の経済政策。
「これからは鉄砲の時代だぜー!」と思いついたところで、
鉄砲を大量購入する資金とルート、それを使いこなす技術と軍事力がなければ成功できないわけですから。
さらに、先生曰く「軍隊を鍛えて、訓練する場所」でもあるそう。
当時は、平和とはほど遠い、巨大な基地のようなはずだったと。なるほどー。

城下町でいわゆる芸術という意味での文化が発展するのは、
江戸中期以降の、本当に戦のない太平の世になってからのこと。
つまり武士にやることがなくなってから、なのですよね。

なぜか勝つと正、負けると誤、とまとめられる傾向にあるけれど、
結果で端折らず、リアルで冷酷な日常があったことにも目を向けていきたいと思っています。
そこに真実があって、発展もあるのだから。

城というのは、今となってはなんとなくそこにある気がするけれど、
ときにはあるものを最大限に生かしながら、ときには形を変えながら、
よくぞまあ、というくらいにうまく活用してできている。
その断片を探していくのがなにより楽しいし、その背景を知ることは貴重な気がする。
まだまだ謎だらけだけれど、先生のお話を聞くことで紐解けることもあったりして、
そういうところが、城マニアをやめられない理由です。

もちろん、お城のお話もたくさん聞かせていただきつつ。
ちょっとした質問にも、丁寧に答えてくださるのがうれしい。
城マニアとしての立場と、研究者としての立場があるため、
日々さまざまな葛藤がおありになるようです(笑)

 

魔除けの逆柱

久能山東照宮にある「魔除けの逆柱」。

葵の御紋がひとつだけ逆さまになっているのがわかるでしょうか?
これは間違えてしまったのではなく、わざと。
<建物は完成と同時に崩壊が始まる>という伝承を逆手にとって、
わざと未完成の状態にすることで、災いを避けようとするもの。

日光東照宮の陽明門にも、この逆柱がありますね。

何事も完璧すぎるのはよくない、ということでしょうか。
こういうところに、日本人の奥ゆかしさを感じたりします。

鳥山雄司/Chara ~Sweet & Tender~

東京文化会館小ホールで開催された【ポピュラーウィーク2012】へ。
【鳥山雄司/Chara ~Sweet & Tender~】に行ってきました。

普段はクラシック専用という格調高いホールでの、
ビルボード以来になる、鳥山雄司さんとのコラボレーション。
バンドネオン、ウッドベース、ピアノ、ギターだけの、
マイクもいらない狭い空間での、一夜限りのスペシャルナイトでした。

Over the Rainbow、So Faraway、恋は水色、I can sing a rainbowなどをカバー。
Langeの花の歌は、なんとオリジナルを歌詞をつけて!
Sweetとは、このことをいう。
とくに、テネシーワルツが本当にステキすぎて忘れられません。。

音楽って、特別な世界を浮遊する「心の旅」なんだな、と思いました。
違う土地に立って、目や鼻、肌を使う「体の旅」とは違う、
想像力やある種の解放感が研ぎ澄まされる感じ。

ギターはもちろんですが、ウッドベースも心地よく、
浮遊しているかのような夢見心地の時間でした。
初めての音色、バンドネオンにもうっとり。
斬新と懐古、鋭さと繊細さ、かわいさと色気が混在するような音色ですね。

シンプルこそプロなのだと、心から酔いしれた夜なのでした。

鳥山雄司/Chara ~Sweet & Tender~
vocal,piano:Chara 
guitar:鳥山雄司
woodbase:鳥越啓介 
bandoneon:早川純