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萩原さちこのプロフィール

城郭ライター、編集者。小学2年生で城に魅せられる。執筆業を中心に、メディア・イベント出演、講演などもしています。

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映画【桜田門外ノ変】鑑賞&桜田門ウォーク

観てきました。

 

  

前売券の購入特典でゲットした、立派な解説本。

現在&当時の桜田門周辺の地図を重ね合わせて見られたりと、江戸城を知る上では興味深い資料です。豪華特典ですね。

 

 

さて、桜田門外ノ変。名前くらいは聞いたことがあるのではないでしょうか。

簡単にいうと、尊王攘夷派(天皇を尊び、外敵と戦う)派の水戸浪士が

江戸幕府の大老・井伊直弼を江戸城桜田門付近で暗殺した事件です。

 

忠臣蔵のような敵討ちでもなく、幕府に反発したただのクーデターではなく、

「世の中を正そう、日本を救おう」という志のもとに起きた、長期計画の一角だったことがポイントです。

井伊直弼が許可なく勝手に開国したり、安政の大獄で弾圧したりと、独裁的な政治をしたことが火種といわれますが、

将軍継承問題も絡んでいたりと、さまざまな背景があったことが興味深いところ。

それぞれの立場や言い分もあったでしょうし、時代の変換期ゆえのやるせなさみたいなものを感じます。

明治維新は、桜田門外ノ変のわずか8年後。

桜田門外ノ変は江戸幕府の権威の失墜、倒幕の発端といっても過言ではない事件といえるでしょう。

 

 

映画の感想ですが、いい意味で映像や構成が古めかしく、“THE時代劇!”でした。

「桜田門外ノ変ってなんだろ?」って方には、わかりやすいと思います。

こういう映画やドラマをTV放送してくれたら、もっと日本史が身近になるのになあ、と思いました。

 

よかったのは、水戸側からの視点でつくられた映画なのに、

<水戸藩士=ヒーロー、井伊直弼=悪役>にさほど偏っていなかったところ。

クライマックスに持ってきがちな襲撃シーンが序盤で終わり、

主人公・関鉄之介(襲撃の現場指揮者)の逃亡劇がじっくり描かれていたこと。

原作に忠実で、お涙ちょうだい的ヒューマンドラマに格下げされていなかったところ。

 

残念だったのは、ラストシーン。そして、その前の関鉄之介のラストシーン…。

“THE時代劇!”が裏目に出てました。

 

 

 

城メグリスト的視点でいうと…江戸城へのリスペクトを感じられなかったのが、とても残念でした(笑)

「城メグリストと行く!水戸ツアー」でオープンセットの江戸城の完成度の低さにがっかりしたのですが、

映像では印象が違うものかと思いきや、自分の目で見たまんま。2億円5千万以上の費用をかけたそうですが…。

井伊邸から桜田門までの距離も、セットだとかなりミニチュアですし。

全体的に距離感がおかしくて、映像的にも無理があったように思います。

ここは、なるべく忠実に描いて欲しかったなあ…。

 
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ちなみに、これが本当の距離感(映画観賞後に現地を歩いてきました)。

 

 

写真左/井伊直弼の籠は、おそらくこのあたり。

写真右/関鉄之介が襲撃を見届けた、松平邸あたり(現警視庁)。今警察官が立っているあたり?

 

 

 

写真左/井伊邸は、国会の手前。おそらく、ちょうど国会前の交差点のあたりが正門。

写真右/首都高速道路の横に残る、井戸。井伊邸は、元加藤清正邸。江戸城の堀は加藤清正がつくりました。

 

 

  

写真左&中/井伊直弼の首を打ち取った有村次左衛門(唯一の薩摩藩士)は、祝田橋付近で追っ手に斬られるも、

日比谷御門(現日比谷交差点)を左折して二重橋方面に逃げます。

写真右/ブリックスクエアの通りに、こんな地図が!かつての屋敷、通りがわかります。

 

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キャストは、日本を代表する俳優さんばかりで満足でした。生瀬さんと本田博太郎がよかったぞー。

近藤公園がいい味出していて、大人計画ファンとしてはうれしかった。

この前の舞台でも感じたのだけど、貫禄が出て来て、ものすごいいい役者さんになったなあ。応援してます。

 

 

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