城メグリスト

萩原さちこのプロフィール

城郭ライター、編集者。小学2年生で城に魅せられる。執筆業を中心に、メディア・イベント出演、講演などもしています。

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イキウメ「関数ドミノ」再演

ひさびさの観劇!
大好きな、劇団イキウメ。
5年ぶりの再演「関数ドミノ」、やっぱりこれは傑作です。

今回もずっと、人間の欲望について考えさせられました。
終始、自分の卑しい部分にやんわり問いかけをされているような、
痛いところをつかれているような、深く考えさせられるものがありました。

ファンタスティックで混沌としながら、ロジカル。
たったひと言のセリフに心をえぐられるような、無気味な臨場感があります。

不治の病とわかっている人に生きたいと言われたとき、「助けたい」と思うのは本心か良心か。
願いを叶えられる能力を自覚したとき、人は世界中の不幸を救おうとするのか、悪用するのか。
はたまた、自分の幸せと欲望だけを満たすのか。

本当に自分の願いがなんでも叶うとき、人は空を飛びたいなどとは思わない。
欲望なんてしょせん常識の範囲内なんだ、というセリフは言い得て妙。
無意識に願うのは、もっと小さくてリアルなことだ。
妄想とは、現実に叶わないと自覚しているから成り立つんですね。

特殊能力を持つ人間を擁護し希望を託す者も現れるわけで、
そうすると、その感情さえ本心から人格を認めるものではなく
能力を持つ者が自分の理想を叶えるために
能力によって支配されたものなのではないかー、という憶測もぐるぐるまわる。
負の欲望もあれば、純粋なもの、理性の上に成り立つものもある。
そのどれもがありえないことではないし、
立場やキャラクターによる違いがこれまたいい得ていて、
「ああ、こういう人いるなあ」とやけに腑に落ちるからおもしろい。
前川さんは、本当に人間の内面みたいなところを掘りおこしてうまく描く人だなあと思う。

演出も表現も前作よりパワーアップしていたように思いました。

やっぱり、趣味の時間は大事ですな。
シアタートラムで15日まで。