城メグリスト

萩原さちこのプロフィール

城郭ライター、編集者。小学2年生で城に魅せられる。執筆業を中心に、メディア・イベント出演、講演などもしています。

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【春風亭昇太と登る鎌刃城址】

【2011 湖北“センゴク”セミナー 現地セミナー 春風亭昇太と登る鎌刃城址】に行ってきました。

前々から行ってみたいと思いつつ、未踏だった鎌刃城。こんなにも魅力のある城だったとは!
鎌刃城については、文献も購入したもののまだ目を通していなかったりもするので、また改めて。
ひとまず、ざっくりとこの日の感想などを書きますね。

 

芸能界きってのお城好き、昇太師匠。なんと自作(!)の足軽衣装で登場。
さすが、人を楽しませる達人ですね。
この格好で、登ってました。さすが山城マスター。お城へのリスペクトと偏愛を感じます。

 

   
   

鎌刃城は、西は琵琶湖の水運、東は美濃、南は京、さらには越前へ続く北国街道の分岐も近い交通の要衝。
江南の六角氏と江北の京極氏・浅井氏によって争奪戦が繰り返された歴史があります。
つまり鎌刃城は、湖北と湖南の境目だった、この国境の城なのです。
そりゃもう、どっちも欲しかったことでしょう。

 

東山道番場宿から徒歩1時間。
なぜこんなところに?という場所に突然ある標高384mの山城ですが、
登れば納得、北には京極氏の居城上平寺城、浅井氏の居城小谷城、そして南には佐和山城が丸見えという好立地。
こんなにも絶妙にして奇跡的な立地なのにも関わらず、
登城前は、どの山が鎌刃城なのか、遠巻きに見るとあまりよくわからないから不思議。
しかも、おもしろいほど佐和山城を見下ろせるのにも関わらず、佐和山城からは鎌刃城は見えません。
これは本当にもう、これも含めて鎌刃城のすごさというべきマジック。

 

 

堀切。人がいると、大きさと傾斜がわかっていいですね。

 

 

コースから逸れて、見に行ってみた大石垣。
思いのほか危険なエリアで、1人で行っていたら、滑って急降下して死んでました。
一緒に行ってくれたマニアの方、助けてくれた地元の方、ありがとうございました。

 

 

昇太師匠は<近江お城大使>に任命されました!記念樹?に私も名前を書いてきましたよ。

 

元滋賀県米原市教育委員会、元長浜城歴史博物館館長で、
NPO法人「城郭遺産による街づくり協議会」理事長、滋賀県立大学教授中井均先生は、
平成10~14年の発掘調査に携わってこられた方なのですが、
その時の成果は貴重なもので、直接お話を聞けて嬉しかったです。

調査から証明された建物の構造や発掘物、推定される廃城の時期をはじめ、
やはり特筆すべきは、主郭虎口の一直線の大規模な石垣と石段。
これは、織田信長が安土城で総石垣の城を初めてつくったという定説を覆すもの。
つまり、安土以前に、安土にこんなにも近い場所で石積みの技術があり、
戦国時代に総石垣の城が存在した、ということです。
穴太積みとは異なる、石と石の間を粘土で埋める工法だというのも興味深い。

織田信長による「破城」という歴史の片鱗も、明らかになっています。

 

さて、昇太師匠といえば、食事も取らずに1人で大堀切の写真を撮りに行ったりと(マイデジカメ)
ただの山城マニアになっていたのが好感度大でした(笑)
もちろん、人気者ゆえに、写真やトークに応じて大忙しだったのですが、
お城愛を抑えきれなかった瞬間があったようでした。
その様子を微笑ましく見てらした中井先生も微笑ましかったです。

 

  
  

ランチの時間が惜しくて、大石垣に膨大な時間を取られたせいで見逃していた、門周辺へ。
「こんな門跡は初めて見たよー!」と大コーフンでした。
思わず1人でザクザクと裏側まで散策してみました。
昇太師匠がうまい表現をしてらっしゃいましたが、「石垣」ではなく「石張り」ですね。
土塁のまわりに、まるで補強タイルのように石を貼付けていくような。

下山した途端、地元の方に
「ヒルたくさんいたでしょ?大丈夫だった?靴の中入ってない?」と5人から聞かれました。
どうやらこの時期はヒル大発生シーズンらしい…先に言ってよ。。
知らなかったおかげで、果敢に攻められてよかったです。

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午後は、『春風亭昇太のおも城噺』。
こちらは、米原市民の方もたくさん来られてました。

そして、昇太師匠と中井先生のトークショー。これもおもしろかった!
昇太師匠の城の“個性”を見る、という独自の楽しみ方を語る姿に共感しつつ、
どうすれば城のよさを伝えられるか、継承できると思うか、みたいなお話は
私も大いに興味がある部分だったので、考えさせられたりもしたり。

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と、イベントはここまでだったのですが、ご厚意で、昇太師匠の歓迎会にも参加させていただきました。

泉市長をはじめとした米原市のみなさま、伊吹薬草の郷文化センター副館長、伊吹山文化資料館長の谷口さま、
安土考古博物館の大沼副館長、佐和山城研究会の田附さま。
文化財や地域と密に携わり、日々継承と発展に尽力されている方々とのお話は、
どれも興味深く、勉強になることばかりでした。
今まで知らなかった近江の魅力にも、たくさん出会えましたし。
本当に貴重なお時間をいただきました。ありがとうございました。
谷口経済環境部長さま、囲炉裏の宿へのツアー、ぜひ実現いたします!

 

そして感激といえば、この湖北グルメ。
西番場ふるさと味の会のみなさまがつくってくださった郷土料理の数々です。
味の会は、ふるさとの味の伝承と開発を目的に、年齢を超えた触れ合いや地域の活性化に貢献されているそうです。

どれだけ心のこもったお料理だったかは、写真を見ればわかりますよね。
調理室の使用開始時間が13時になっていたので、半日かけて準備してくださったのだと思います。

なによりもうれしいのは、こういうおもてなしの心ですね。
どんなに高いお店に連れていかれるより、私はこちらのほうがうれしい。

 

   

湖北にはおいしくて珍しいものがいっぱい。東京では、あんまり知られてないんですよね。もったいない。

左から/
○長浜の郷土料理「焼き鯖そうめん」。
焼き鯖を甘辛く炊き込んだだし汁で、そうめんを煮込んだもの。私の大好物です。
○滋賀グルメの代名詞「鮒寿司」。
素面ではとても食べられませんが、日本酒のアテにはたまらない。
ちなみに素材の質や製造法によって味も値段もピンキリだそう。こちら高級品!
○1200年超の歴史を誇る「丁字麩の辛子酢みそ和え」。
加賀の治部煮に入っているような生麩とも、仙台麩(油麩)ともひと味違う、
もちもち食感となめらかさ。
私の中でKING OFお麩かもしれません。
○近江八幡発祥「赤こんにゃく」。
派手好きな信長にちなんだ色だとか。なにげに、意外とおいしい。

 

   

○琵琶湖生まれの「ビワマスフライ」。
琵琶湖にしか生息しないマス。味が濃くて、甘くて、脂ノリノリ。
○地元産馬肉の薫製「さいぼし」。
○関東の私からすると関西の味「豆腐の田楽」。
○地元産大根のとのハーモニーがたまらん「合鴨ロース」。
などなど。

 

そして、近江お城めぐりの新名物(?)、石垣団子。ネーミングがすばらしい!
滋賀のおいしい地酒もたくさんいただきました。

泉市長はじめ、米原市のみなさまが次々にいらしてお酌してくださいました。
みなさん間違いなく偉い方々なのでしょうが、気さくで楽しく、愛がある。
そして、2人以上になると芸人のよう(笑)いたるところで<米原漫才>が繰り広げられていました。

 

昇太師匠と。とてもやさしく楽しい方でした。

 

 

中井先生はお城界では有名な先生ですが、気さくでお話もおもしろく、
とってもステキな方で、すっかりファンになりました。
「僕も城メグリストになりたいなあ!」と言ってくださってうれしかったな。
ご紹介などもしてくださって。人がお好きなんでしょうね。
米原市の方にノセられて、恐れ多くも握手ショットも。中井先生、失礼しました!
 

近江のお城と近江の国がさらに大好きになった、夢のような1日でした。

 

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